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なぜ何度も歯医者に通わなければならないの?

このコラムのポイント

① なぜ歯医者の治療は1回で終わらないのか
② 毎回の治療で歯にどのような変化が生じているのか
③ 何回も通うことで歯医者は儲かるのか

「なぜ何度も歯医者に通わなければならないの?」

 歯医者に通われたことのある方なら、一度は思ったことがあるかもしれません。虫歯の治療、歯の根の治療、歯周病の治療、入れ歯の治療、定期検診・・・。歯医者に行けば必ずといっていいほど次の予約が必要になりますし(しかも1ヶ月も2ヶ月も先)、5回も6回も通うことになって大変。しかも何をしているかわからないし、見た目が変化しているようにも感じない。忙しいし、正直来るのも大変だからもう行かなくていいかな・・・。

 そんな気持ちはよくわかります。筆者も幼い頃に近所の歯医者にお世話になることがありましたが、1回の処置で薬をもらって終わらないかなと思っていました。

 そこで、今回のコラムではよくある「歯の根の治療」を例にとって、なぜ歯医者の治療は1回で終わらないのか毎回の治療で歯にどのような変化が生じているのか、を説明していこうと思います。

 歯の根の治療には大きく「抜髄法」と「感染根管治療」の2つがあります※1。このような治療が必要になるのは、主に虫歯が進行することで感染して(死んで)しまった歯の神経を取る場合です。大きなステップとしては、以下のようになります。

↑虫歯が進行して神経が感染してしまい、根の先端に膿が溜まっている

① 歯に穴を開けて神経を取る

② 感染した神経が入っていた空間を殺菌し、歯の根の先端(神経の入り口)を封鎖する

 →無菌状態になるまで何度も繰り返す

↑物理的に感染したものを掻き出す方法と、化学的に殺菌する方法※2を使い分ける

③ 神経の代わりになる材料を詰める

④ 必要であれば土台を立てて歯の被せ物をする

 皆さんが根の治療を受ける際には、このように治療が進んでいきます。この一連の治療の中で、最も時間と回数がかかる処置が、

②感染した神経が入っていた空間を殺菌し、歯の根の先端(神経の入り口)を封鎖する

です。理由として、

  • 一度感染したものを無菌状態にすることが難しい(虫歯菌は目に見えない)
  • あごの骨の中にできた傷が回復するのに時間がかかる
  • 歯の根の先端を封鎖するのに時間がかかる

ことなどが挙げられます。また、

  • 処置する場所が歯の中の何mm〜何μmの世界なので、細かで慎重な作業になる

ことも時間がかかる理由の1つです。

 要するに、治療に回数と時間がかかるのには歯科医師による事情というよりは、虫歯菌の殺菌と体の回復を待つために必要であるということです。もし先を急いで、殺菌や傷の治りを待たずに材料を詰めて被せ物をしてしまうと、根の病気の再発や別の病気の発症を引き起こし、被せ物を除去して最初から根の治療をやり直さなくてはなりません。

 以上のことを読んでいただければ、「何回も通わせることで歯医者は儲かっている」わけではないことがおわかりいただけると思います。正直な話、歯の根の治療を何回もするより、保険外の治療(いわゆる自費)をやっていた方がよっぽど儲かります・・・。しかし、歯の根の病気を持っている方が多くニーズがあるため、歯科医師は技術を磨いて治療に当たっています。

【まとめ】

 歯医者の治療が1回で終わらないのは、殺菌と体の傷の治りを待つためです。これは根の治療に限らず、虫歯(虫歯菌)、歯周病(歯周病菌)、抜歯(骨の治り)なども同様です。担当の歯科医師と患者さんが協力して治療に当たることで、お口の中を健康にしていきましょう!

【注釈・参考資料】

※1

教科書的には抜髄法(麻酔抜髄法)は歯髄疾患に対して、感染根管治療は根尖性歯周疾患に対して行われる処置です。両者の最も大きな違いは歯髄の生死なので、厳密には抜髄をする際の神経は生きているということになります。ここでは一般の方が理解しやすくするため、あえて一括りにしています。

※2

化学的な殺菌によく用いられるのは水酸化カルシウム製剤です。これは強アルカリ性(pH 12.5)であるため細菌の殺菌に有用です。またカルシウムを含有しているため、歯の根の先端の閉鎖にも有用です(硬組織形成促進作用)。

https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/2280/1/2010285480.pdf

イラスト https://www.dental-sozai.com/

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歯学部4年。「医科歯科連携」を実現可能な社会を目指し、学会や勉強会、学生団体などに積極的に参加。関心分野は歯科麻酔学、口腔病理学、口腔外科学(薬剤関連顎骨壊死/MRONJ)。日本歯科麻酔学会および日本臨床口腔病理学会 学生会員。日本有病者歯科医療学会、日本口腔顔面痛学会、日本口腔外科学会などに参加。BLSプロバイダーコース修了。

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