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リラックス麻酔を知っていますか?

このコラムのポイント

①「リラックス麻酔」(静脈内鎮静法)とは
②「リラックス麻酔」はどんな患者さんに使えるのか
③「リラックス麻酔」は誰が担当するのか

皆さんは歯科麻酔科・歯科麻酔科医という存在をご存知でしょうか。

 歯科における「麻酔」は、歯の治療をするときにテープや注射器で歯や唇の感覚をなくすイメージが多いと思いますが、実は歯科麻酔科はもっとたくさんの役割を担っています。これから、何回かに分けて歯科麻酔科の役割をご紹介していきます。情報の根拠(エビデンス)となる論文や参考資料も注釈で付してありますので、気になる方はご覧になってください。

歯科麻酔のイメージ・・・?

https://www.dental-sozai.com/guide.html

 今回は題名にもしてある通り、「リラックス麻酔」(正式には静脈内鎮静法やセデーションといいます)をご紹介します。

 例えば、これをお読みになっている皆さんやご家族、お知り合いなどに、「怖くて歯医者に行けない」「歯医者に行くとドキドキして息が苦しくなる」「小さい頃に無理やり歯医者に連れて行かれて怖い思いをした」というような方はいらっしゃいますでしょうか。また、心臓(高血圧や不整脈など)や脳(脳梗塞など)の全身のご病気をお持ちで、歯科治療が不安だという方はいらっしゃいますでしょうか。

 歯医者さんに対して恐怖心があるような場合、その原因の多くが「過去の歯科治療における恐怖体験」であり、たとえむし歯の歯を1本治療するだけでもなかなか治療が進まなかったり、治療が途中で中断してしまったりします。怖いものを長い間ずっと経験し続けなければならないのは非常に辛いことですし、今後の歯科治療にも悪い影響を与えます※1。また、心不全、不整脈、脳の病気、糖尿病、血液の病気などの全身のご病気をお持ちの場合、歯科治療中に体調が悪くなったり、症状が重くなり緊急事態になったらと考えると、不安ですよね。そんな時の選択肢の1つとして、「リラックス麻酔」を知っていただこうと思います。

【ご注意ください!】
 これからご紹介するリラックス麻酔は、身体の状態や病気の治療具合など、そもそも歯科治療ができない患者さんや、リラックス麻酔を行うことは危険だと思われる患者さんには使用できないことがあります。このような判断は歯科麻酔認定医・歯科麻酔専門医の資格を有する歯科医師が判断しますので、まずは実施している歯科医院にお問い合わせください。日本歯科麻酔学会では、専門の資格を有する歯科医師の一覧を公開しています(以下URLより飛べます)。
http://kokuhoken.net/jdsa/list/index.html

 「リラックス麻酔」とは、その名の通り患者さんにリラックスした状態で歯科治療を受けていただく方法です。具体的には、血管に点滴の針を刺して、少量ずつ眠くなるお薬を投与していきます。同時に、心電図や呼吸の状態などを常に歯科麻酔科医が監視しますので、眠りすぎて息ができなくなったりすることはなく、何か異常が生じてもすぐに対処ができます。お薬の効き目は「患者さんが治療中に指示に従える程度」が最適とされていますので、例えばお口を開けたり閉じたり、お顔の向きを変えるなどは患者さんご自身で行うことができます。

リラックス麻酔の利点は以下のようなことが挙げられます。

  • 治療中は意識がぼんやりした状態ですので、治療が怖いといった患者さんでも治療を受けることができるようになります。
  • 治療の内容もあまり思い出せなかったり、覚えていないことがあります。
  • 意識はある状態ですので、患者さんご自身で呼吸をすることができます(全身麻酔とは少し異なります)。
  • 全身に病気がある場合でも、リラックスして治療を受けることで症状の悪化を防ぐことができます。
    →例えば、高血圧をお持ちの患者さんの場合、リラックスして治療を受けていただくことで血圧が過度に上昇することを事前に防ぎ、血管の破裂などを予防することができます。
  • 症状が悪化した場合でも、適切な処置をすぐに行うことができます。

ただし、リラックス麻酔には以下のような注意点があります。

  • 眠くなるお薬を使用するため、当日は車の運転や重要な判断を必要とするお仕事を控えていただきます。
  • 治療前の食事や水分摂取の制限があります。※2
  • 付き添いの方に同伴していただく必要があります。
  • お薬の効果が十分に抜けるまで、院内でお休みいただく必要があります。
    →近年では効果が短いお薬も登場しているため、全身麻酔のように1日中眠っているというようなことはありません。
  • 上記の他、ご帰宅いただくにはいくつか条件があります。※3
  • 肥満や睡眠時無呼吸症候群などの気道(鼻から肺までの経路)が塞がりやすいような患者さんには、使用できないことがあります。
  • 催眠薬などを常用されている患者さんには、効果が薄い場合があります。

 このような利点や欠点をお読みいただくと、しっかりと管理された環境で治療が行われているということがご理解いただけると思います。仰々しい文字が並んでいると思われるかもしれませんが、これらはすべて患者さんに安全に歯科治療を行うための安全装置ですので、(何事もそうですが)条件を守って行えば安全に治療を行うことができます。

 最後になりますが、「リラックス麻酔」は近年導入する歯科医院が増えてはいるものの、まだまだ認知度は低いと思っています。また、最近では歯科医院に歯科麻酔科医が出向き「リラックス麻酔」を実施するサービスも開始されました(以下のURLから飛べます)。もしかかりつけの歯科医院で実施していない場合には、ぜひ相談してみてください。これをお読みになった方の中で、少しでも治療に前向きになれるようになった方がいらっしゃれば幸甚です。これからも安心で安全な歯科治療の情報提供を心がけていきます。
https://www.cdac-masui.com/

【まとめ】
 「リラックス麻酔」は、歯科麻酔科医の管理のもと、歯科治療が怖い患者さんや全身の病気をお持ちの患者さんに安全に歯科治療を行うための選択肢の1つとなります。気になった方はぜひ、お近くで実施している歯科医院にお問い合わせください。

【注釈・参考資料】
※1
Weinstein P, Shimono T, Domoto P, Wohlers K, Matsumura S, Ohmura M, Uchida H, Omachi K. Dental fear in Japan: Okayama Prefecture school study of adolescents and adults. Anesth Prog. 1992;39(6):215-20. PMID: 8250343; PMCID: PMC2148611.

※2:食事や水分摂取制限

  • 2時間前まで:
    clear liquids(水、果肉を含まないフルーツジュース、炭酸飲料、 お茶、スポーツドリンクなどの機能性飲料水、ブラックコーヒー)の摂取可 
  • 6時間前まで:
    牛乳、軽食(トーストとclear liquids)
  • 8時間前まで:
    通常の食事の摂取可

『歯科診療における静脈内鎮静法ガイドライン -改訂第2版 (2017)-』日本歯科麻酔学会

※3:帰宅条件
1)バイタルサインが安定していること
2)人、場所、時間等について認識する基本的精神運動機能が回復していること
3)自他覚的にふらつきなく通常速度歩行可能、または、閉眼両脚直立検査で 30 秒間立位保持可能など、基本的運動・平衡機能が回復していること
4)術後出血の確認
5)疼痛の確認
6)嘔気や嘔吐がないこと

『歯科診療における静脈内鎮静法ガイドライン -改訂第2版 (2017)-』日本歯科麻酔学会

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歯学部4年。「医科歯科連携」を実現可能な社会を目指し、学会や勉強会、学生団体などに積極的に参加。関心分野は歯科麻酔学、口腔病理学、口腔外科学(薬剤関連顎骨壊死/MRONJ)。日本歯科麻酔学会および日本臨床口腔病理学会 学生会員。日本有病者歯科医療学会、日本口腔顔面痛学会、日本口腔外科学会などに参加。BLSプロバイダーコース修了。

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